「存亡の機」を経験したことはありますか?危機ではありませんよ。

存亡の機とはどういう意味?

浅倉出版に新規の仕事が入りました。深田出版の山中部長に頼まれていた件です。

パートの田中さんは社員の湯本さんの指示に従って文字入力を担当することになりました。

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「田中さん、こちらの入力をお願いできますか?」

「はい。」

それは最近引退した歌手、東野さんの自伝本の原稿でした。

「これのことだったんだ…」

「彼女は次の仕事のことがあるから結構急いで書いたみたい。だから誤字脱字や、漢字にすべき所があったら直して良いそうよ。」

「直していいんですね。」

「もちろん付箋は付けてね。私が校正するから、終わったら持ってきて。」

「わかりました。」

原稿には、東野さんの事務所が一時潰れそうなになったが、社長と共に必死でがんばって立て直した時のことが書かれていました。

「苦労したんだな………あれ?」

そこには「事務所が存亡の機を迎えました」という一文が。そして、田中さんは「存亡」と「存続」を同じ意味だと思っていました。

「『危』が抜けたのかな?『危機』が良さそうね。」

入力が終わり、湯本さんに原稿とゲラ(校正用に刷ったもの)を持っていきました。

「終わりました。」

「ありがとう。」

湯本さんは「存亡の危機」という文言を見てびっくり。危機感を覚え、「ちょいちょい」と田中さんを手招きしました。

「?」

改めて日本語の難しさを痛感した田中さんでした。

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存亡の機と存続の危機は同じ意味?

「存亡の機」とは、「存続するか滅亡するかの重大な局面」という意味です。

「存亡の危機」と書かれることが少なくありませんが、「存」は存続、「亡」は滅亡で逆の意味ですから、並列にして「危機」とするのはちょっとおかしいですね。

「危機」を使うなら「存続の危機」です。

「存亡の機」とは意味が微妙に違うのですが、混同されたり、ごちゃ混ぜにされたりすることがありますね。

「存続」は生存し続けるという意味ですから、その「危機」はあっても「機(局面)」はないのです。

さて、「存亡の機」と似た言葉で、「危急存亡の秋」があります。

中国の軍師「諸葛亮」が暗愚と言われた君主「劉禅」に奉った「出師の表」にある言葉の一部で、「生き残るか滅びるかの大きな瀬戸際に立たされている状況」という意味です。

「秋」は「あき」ではなく「とき」と読みます。「時」ではなく「秋」としたのは、秋は穀物を収穫する1年で最も大切な「とき」で、危機感を煽りたかったのでしょう。

知っているとちょっと格好いいので、セットで覚えておきましょう。

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